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効果的な交通安全教育とは

 子どもの交通事故を減らすためには、学校や家庭での安全教育が欠かせない。しかし、安全意識を高めるためには、子どもの心に響かせ、自ら考えさせる工夫がないと効果が少ない。昨年から、子どもの事故を減らすための取り組みを紹介してきた「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。ことし3回目のテーマは、「効果的な交通安全教育とは」。茨城県つくば市の一般財団法人日本自動車研究所安全研究部の主任研究員・大谷亮さん(40)に、安全教育の在り方について聞いた。(迫佳恵)

日本自動車研究所
大谷亮さんに聞く

子どもが「教師役」の手法で
事故への危機意識 大幅に向上

現在の交通安全教育の傾向を踏まえ、どのような研究をしているのか教えてください。
 発達・教育心理学的観点から、子どもの交通安全教育プログラムを開発・実践し、子どもの安全態度や交通行動に及ぼす効果を研究している。いま、教育現場では、交通安全の授業時間が少ない上、プログラム開発や評価に関する研究の積み重ねが欠けている。イベント形式による教育がパターン化されており、子どもが受動的に参加することが多く、効果は限定的である。改革が必要と思い、考案したのは「発達段階に応じた継続的な教育」だ。学年ごとの特徴に合わせてアプローチする。

小集団討論と役割演技法

具体的には。
 低学年には、歩行訓練、中学年には、自転車の訓練。この頃は、潜在的な危険を予測するのは難しいので、「必ず止まる」「左右を見る」などを徹底させる。指導する際は、行動を小さく区切り、一つの行動ができたら、次の行動を教えることが重要だ。4年生以上には「小集団討論」と「役割演技法」の導入を考案した。役割演技法とは、高学年が教師役となって、低学年に道路の横断方法など交通ルールを教えるプログラムだ。

小集団討論と役割演技法を取り入れる独自の手法。学習の進め方は。
 つくば市の小学校で、5年前から延べ約200人を対象に検証してきた。半年間に6回教室を開く。4回目までは、小集団討論で、4、5人グループに分かれて、事故の原因と対策を話し合う。例えば「事故の原因で多いのは何か」「飛び出しやすい場所は、周りのどこにあるか」「飛び出しやすい心の状態はどんな時か」など。45分間の授業で、テーマは1問ほど。答えはいくつもある。じっくり考えてもらうのが狙いだ。
 5回目は、役割演技法の事前学習。道路の正しい横断方法や、低学年への接し方を考えさせる。大切なのは、子ども自身に考えさせること。「笑顔で目線を合わせる」「低学年には左右が分からないから、言葉だけでなく動作で教える」などと自発的に意見が出てくる。それらは「秘伝のマニュアル」として子どもたちにまとめさせる。この2日後に、実際に子どもを教師役として低学年に指導させる。

実施後、子どもに変化は見られますか。
 実施前後の子どものアンケートによると、「自分は事故に遭わない」と思っていた子どもの危機意識は大幅に向上した。また、登下校時の安全確認の行動観察を、隠れて1週間続けた結果、多くの子どもが改善されていた。さらに、学校の廊下の歩き方も適切な意識の変化が見られた。交通安全だけにとどまらない効果が見られた。
 しかし、継続しないと1年後には元に戻ってしまう。持続させるために必要なのは、親や地域住民の協力のもと、繰り返し教えることだ。

普段からの声掛けが重要

子どもに指導する際のこつは。
 簡単な言葉でゆっくり話す、子どもに答えを見つけ出させる。子どもの行動を見て、良い所を褒め、悪い点を修正する。「左右を見てではなく、右を見て車がいないと分かったら左を見てね」と理由も伝えてほしい。興味を持たせる工夫は、教育担当者の技量にかかっている。そこで、大人向けの「指導者用マニュアル」を作り、子どもが主体的に学習できる手法をまとめた。
 家庭での普段からの声掛けがとくに重要だ。大人が子どもと歩くときに、自然に会話の中で教えてあげて。繰り返せば、箸の使い方と一緒で習得しやすい。「車が止まってくれるから大丈夫」「まさか自分に限って」ではなく、自分のこととして捉えさせる努力が大切だ。

「道路では子どもを急がせない。学校や家族で、ルールや安全意識を繰り返し教えてあげることが大切」と説明する大谷さん

大谷亮(おおたに あきら) 2002年中京大文学研究科心理学専攻博士後期課程満期退学。日本自動車研究所入所後、12年に危険度評価と運転行動で博士号(心理学)を取得。現在は、同所安全研究部主任研究員、博士(心理学)として、子どもの交通事故を減らすための研究を続けている。

一般財団法人日本自動車研究所
自動車の役割が多様化する中、中立的な研究機関として、自動車に関する総合的な研究を進め、クルマ社会の健全な持続的発展に寄与している。
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