トップページ特集事故滅へ心理学を生かす 主幹総合交通心理士・比治山大現代文化学部長 大谷 哲朗教授に聞く

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子どもの安全を守ろう

ひろしま交通事故防止キャンペーン (3)事故滅へ心理学を生かす

子どもを交通事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第3回のテーマは「事故減へ心理学を生かす」。交通事故のリスクの高い運転者や歩行者の特性と防止策について、主幹総合交通心理士の資格を持つ比治山大現代文化学部長の大谷哲朗教授に聞きました。

主幹総合交通心理士・
比治山大現代文化学部長 大谷 哲朗教授に聞く

成長に合わせた「危険回避」の学びを

心理学を交通安全に生かす

─ 交通心理学はどんな学問で、交通心理士はどんな活動をしていますか。

運転者や自転車乗員、歩行者を含めた道路利用者の行動特性を心理学的に分析し、交通事故の低減を図るための学問です。
交通心理士は、交通心理学の知識を生かして交通事故防止や交通安全指導に携わる人材を育てようと、日本交通心理学会が2002年から認定を始めた資格です。現在、有資格者数は全国で約600人、広島県内では5人。大学教員、自動車教習所指導員をはじめ、損害保険会社や自動車メーカー、運輸会社の関係者など多様な人材が資格を取得し、それぞれの分野で交通安全のための研究と実践を重ねています。私はここ数年、運転者の心理ストレスに関する研究に力を入れています。

─ 運転者の心理と交通事故の関係は。

交通事故の直接的な原因には不注意、判断や運転操作の誤りなどが挙げられます。背景には運転者の心理状況が少なからず影響しています。運転は反射神経の働きだけではなく、その人の判断や感情、記憶など、脳の働きによって行われるからです。運動神経が良ければ、事故を起こさないわけではなく、運転者の考え方、感じ方が大切です。交通心理学の研究では、運転者が「怒りや焦り、いらだち」といったストレスを感じた場合、判断や操作をミスし、事故のリスクが高まることが分かっています。ストレスの要因には、「前の車が遅い」「後続車がぴったり付けてきた」「前の車が合図もなく、左折または右折した」といった他車の動きによるもの、「赤信号で待たされる回数が多い」「渋滞に巻き込まれた」といった道路の環境や状況によるもの、「約束の時間に遅れそうだ」「忘れ物をした」といったものなどさまざまです。
運転者のパーソナリティーも重要で、「すぐカッとなる人」「軽はずみな行動をする人」「協調性に欠け、自己本位な人」などは比較的、交通事故を起こしやすいといえます。交通事故総合分析センター(東京)の調査では、小学生が歩行中に遭った交通事故の半数近くは、運転者の違反に起因します。運転者が自己の感情をコントロールし、ストレスを抑えることは、子どもの交通事故を防ぐ上でも大切ではないでしょうか。

─ 運転者が自分の感情をコントロールし、安全運転するために効果的な方法はありますか。

例えば他車が割り込んできたとしても、「何かやむを得ない事情があるのではないか」と相手の側に立って考えてみると、いらつく気持ちは少し和らぐのではないでしょうか。「自分は今、怒っている、焦っているな」と自分を客観的に見つめられるよう習慣付けることも大切です。急いでいる時にこそ、「信号よし」「横断歩道よし」と声に出す「呼称運転」を実践すると効果的です。
普段から、「一時停止など安全確認をしっかり行う」「車間距離を十分に保つ」「自分のペースを守る」など、基本を徹底しておけば、運転中にストレスを感じたとしても、ミスの防止につながります。
子どもの歩行中の交通事故では飛び出し事故も目立つので、子どもと遭遇する頻度の高い登下校の時間帯や小学校周辺、住宅地では速度を落とし、飛び出しに注意して運転する必要があります。

─ 歩行者の心理や行動に何らかの特性はありますか。

歩行者や自転車乗員は「運転者から自分の姿は見えているだろう」と錯覚をしがちです。音楽を聞きながら歩く歩行者も多く、車の動きなどを全く見ていないケースもあります。雨天では歩行者は傘を差しているため、視界が悪く、周囲を見ない傾向にあります。
子どもの場合は、危険の感じ方(危険知覚)に特質があります。ある実験によると、9歳以下では、大きな車など目に見える対象物のある交通状況では危険を大きく評価するのに対して、車が隠れているかもしれない見通しの悪い交差点などでは危険を小さく評価することが多いと報告されています。特に幼少期は、注意を引く何かがあればそれに気を取られる傾向が強く、飛び出し事故の原因になります。

体験型の安全指導が効果的

─ 子どもの交通事故を防ぐにはどんな取り組みが重要ですか。

子どもは感情の自己コントロールが難しいため、発達段階に応じた交通安全教育が何より大切です。危険知覚力の育成、交通ルールの理解、車の特性の知識などを段階的に指導することが求められます。
4~6歳の幼少期は保護者が自宅周辺の危険な場所を特定し、その場所へ行って具体的な安全指導を行いましょう。横断歩道を渡る時は青信号でも必ず止まって前後左右の安全を確認し、手を上げて渡るよう指導すること。その際は、顔と目を前後左右にしっかり動かして、視野の真ん中で危険な対象物を捉えられるよう訓練します。
7~8歳の低学年は模擬信号機などを使った体験型の交通安全教室に積極的に参加すると良いでしょう。実際の通学路を使った歩行訓練も効果的です。低学年の場合、交差点を曲がってきた車にはねられる「巻き込み事故」が多いのが特徴です。車高が高く、死角の広いトラックやバスなどの大型車両について「青信号だから止まってもらえるはず」「自分のことが見えているはず」と思い込まず、慎重に考える習慣を身に付けるよう教えるべきです。
9歳以上になると、交通事故が起きる原因や防止のための方法などについてグループ討論を行うことで、危険回避のための思考力や判断力を養います。通学路周辺を皆で調査し、交通事故の危険箇所を見つけ、地域の交通安全マップを作ることもお勧めします。

大谷 哲朗さん

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター


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